久しぶりに、仕事の作業からこぼれ落ちたというか、にじみ出た話題をお裾分け。
 と書いて、ちょっと気になった。裾分けの語源は? 紐解いて、頷いた。裾は、言うまでもなく着物の末端で、地面に近い粗野な存在。だから「つまらないもの」に転じた、とのこと。ふーむ。
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 さて。今年の日本でのバレンタインデーは、どんな塩梅だったんだろう? 超高額のスーパーブランド・チョコは、爆売れしたのかな。オフィスや学校では、相変わらず義理合戦が猛烈展開したのかな? そういったあれこれには年齢的に関わらなくなったし(寂)、そもそもダイエット中だからチョコなんて食わねーし(儚)、と目を背けていたんだけど。
 ボクの観察地アメリカでは、「アンチ・バレンタインデー」の動きが人びとの目を惹いた。認識は-----孤独な奴には、そもそも縁がねーぜ(無)。当日、喧嘩して別れっちまうカップルだっているんだ(怒)。だからこそ数年来、この日になると1日中憂鬱なのアタシは(哀)。-----という人びとに真摯に向き合おう、が含意(括弧内の単漢字、しつこいね。止めよう)。
具体的には。
アリゾナ州発の中華料理チェーンPFチャングスは、「決裂餃子」を店頭で無料サービスした。あなたの別れ話を、弊社のホームページに投稿してね、とお願いしつつ。ピザハットは、もう一歩踏み込んで、「さよならパイ」を提供した。同社の専用サイトに申し込むと、別れた(別れそうな)相手に宅配してくれる。お別れメッセージも添えて。
 なんと、トイレ紙メーカーのWho Gives A Crap(ちょっと、訳したくないな。ちなみにCrap≒糞)は、「ゴミかごに捨ててある“お別れラブレター”を弊社まで送ってくれれば、美しいトイレ紙に作り直して返送します」とメッセージした。
 アメリカ観察、50余年。初めて触れたたぐいのネタ。見落としてきたのかなあ。
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「AIカノジョ」の登場は、時代を背負っている。
 言うまでもなくAI主導のチャットボットで、生まれてこの方、彼女がいない男性陣を筆頭に据える会話アプリだ。音声や映像を介して自分のことを気遣い、理解し、愛してくれるエモーショナルなコンパニオン、つまり相棒。利用者は、そう好意し好感する。会話を繰り返し、広げ深めるほど、つながりが密になっていく。もうすぐ、ChatGPT的なるものを搭載する人型ロボットも登場するから、会話は、性的な●※▽★に転換するかも。
 しかしこの事例、ある意味で驚かない。というのも。
 ボクが、いまや古典的な初期対話ソフト「イライザ」に出会ったのは、すでに40年以上も前の1981年。サンフランシスコ郊外の科学館で、10歳ほどの少女がなぜ今日、不快なのかを、話しを導きながら目の前で解いてみせた。ボクもつたなく対話して、「さあ、次の人が待ってるから、このへんで」とキーボードを叩いたら、「なぜキミは、次の人がいると立ち去るのか」などと畳みかけてきたりもした。
 委細は省くが、このイライザ・モデルはその後、優れた精神分析ソフトに進化して名を馳せ、生身の人間である精神科医よりも気楽に会話できる相手として、驚くほどファンを増やした。専門家であるとはいえ、人間にプライバシーを細かく暴露するのは嫌だ、でも機械なら、とする人びとは確実に増えていったのだ。そして、そんな文脈が、AIカノジョに行き着いた。
 まあ、ヘリクツはこのくらいに。ご興味の向きは、ReplikaかParadotとのお付き合いを初めてみては? もちろん、カノジョとの会話で蓄積される膨大な私的データが、誰に、どう悪用されるのか、といった懸念も同時並行して争点になっているけれど。
 バレンタインと同じで、よわいを重ね切ったボクには、縁のない話? いや、年齢を偽ってハタチのふりをすれば、それなりにイケる? あ、でも、毎日マルハラ文章してるようじゃ、即バレか。それとさ。なぜ「AIカレシ」は出てこないの? む、こういう書き方、セクハラ? でも、とにかく不思議。
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 若者ネタばかりだと同輩諸氏に叱られるから、じじい向けの動きも、ひとつ。
 オーストラリアでの話なんだけど、男性&家庭用の尿検査器が売り出された。小さいジョウロ型の小箱に尿をナニすると、前立腺や膀胱の具合に関わる数値を瞬時かつ手軽に表示してくれる。商品名はWiddleometer(widdleは英の幼児語で“おちっこ”の意)、値段は33米ドル。
ま、こういうことは密やかにやるべき秘事のはずなんだ。でも反面、同窓会なんかに出ると、俺の尿酸値は○○だぁなどと病気自慢して威張るやつらが多い今日この頃、日本でも売れるかもね。
ところで、この商品を開発した家庭医は「世界初」と声高らかなんだけど、実は先行事例があった。男性用の尿便器つまり俗称アサガオで、ナニをぶち込むと関連数値を適宜に検知し、しかも音声で告知するという、話しを聞くだけでは優れモノだった。
しかし、ご想像いただきたい。マーケティング・プレビュー施策としてある公衆トイレに設置したのだが、数人が並んで一斉にナニすると、複数の音声が「あんたの数値は○★■×!」と重なり合って騒音に転じるし、何よりもよく聞き取れないという始末が判明。早々にお蔵入りした。
何年前の話しだったのかな。いちど原稿に書いたはず。あれっ、想い出せない。オレ、前立腺、ヤバいのかな?
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 今回は、かなり話が長くなった。申し訳ない。でも、オーストラリアって、時々興味深い国なんだ。最近でも、就労者は契約労働時間外の電話やメールは無視してよい、という法案を、国の議会の上院で可決してみせた。いわく「断線する権利!」。素敵だよね。