お気づき? 最近、電車に乗ると、わりと空いてるはずの時間帯でも、銀の席まで満杯気味。主犯は、モバイルゲーム。あれってさ、両手を使ったほうが効率がいい。手荷物は邪魔。ということで、みんなご着席なのさ。荷物を膝に置いて。何か問題あるかって? 別にぃ!

さてはて、何が“月刊ブログ”だ。前回書いたのは、129日。もはや“ほぼ季刊ブログ”とでも蔑称しないと。とほほ。しかし、なぜこんなにも遅筆なのか、延筆気味なのか?   自分で問うにしては、甚だおかしい問題だと思うのだけれど。

 まあ、正直に書けば、テーマの枯渇。「青春譜編」や「海外事件簿編」は、かつて、かすかな人気を誇ったけれど、残念ながら種が尽きた。ここ23年の「訃報編」は、こう言っちゃあなんだけど、ネタが生まれてくれなければ書きようもない(哀笑)。うーむ。

 ということで、今号以降、「メモ日記編」を新登場させることにした。「メモ日記」? お仕事以外の時間でさ、ボクが安売りチラシの裏なんぞにこっそりメモった小ネタ群のことさ。鼻提灯を生産しつつテレビ観たり、鼾をかきながら新聞読んだりしてる合間にね。

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 2月○日。テレビの、あるインタビュー番組で、かの吉田拓郎さんがつぶやいてた。「最近は、日帰りコンサートが多いんですよ」。どうしてだと思う? 疲れちゃうんだよね、連泊の出張は。彼、いま70歳。ボクと、まさに同い年。というわけでもないのだけれど、傑作なセリフが引き続いた。「年配な方々の前だと、やりにくくって、しんどい」。なぜ? まあ、よーくわかる。彼ら諸輩は、頻尿なんだよね。だから入れ替えひっかえ、席を立つ。ナニしに。「つまり、客席が忙しなくって、演奏なんかやっちゃぁいらんねえ!」

 ほぼ同じ日頃の、これもテレビで、倉本聰さんが語っていた。タバコをくゆらし、くゆらし、あの『北の国から』の逸話をめぐって。

 かなり初期のころだが、純クンと蛍ちゃんが、五郎さんの命を受けて、猫車で石を運ぶシーンがある。重たいのに、子供なのに、なぜ自分たちが? と不平不満顔で。----そこで、と倉本さんが語り出す。裏話というか、演出論を。

 ふつうなら、猫車の底に藁を敷き詰めて、その表面を石で覆って運ばせる。「重たいなぁ、というフリをしっかりね」と声をかけながら。でも倉本さんは違った。藁なんか敷かせなかった。彼ら子役たちが自分の手で石を拾い上げ、積みすぎ重すぎて何度も転んで、やっと運べる限界を彼らが学んで----撮り下ろしていった。

 倉本さんは、ことばを継いだ。木は、根で立っている。でも、根は見えない。私たちは、幹や花や葉をのみ視てしまう。しかし-----と。正直さ以外を知らない純粋無垢なボクとすれば、凄みをすら覚えるシーンだったんだ。そう語るご本人や作品への好悪を超えて。

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 3月△日。新聞の書籍広告を眺めていたら、『接触造形論』という書名が目に跳び込んできた。「触れあう魂、紡がれる形」と副題も芯が強い。迫力あるなあと、とっさに思った。でも、内容は? さっそくアマゾンに跳んで、紹介頁を開いた。

〈感覚と藝術、その臨界へ-----。「触れる」ことで作品は紡がれ、「接触」によって思想や文化が「写り/移り」を遂げる----

うへぇ、すげーなー、と独りごちた。でも、興味はつのる。このデジタルな時代。リアルな接触なんて、見ようによっては死語化する気配だ。しかし他方では、デジタルな接触を可能にする挑戦も跡を絶たない。という前提で、では「写り/移り」って、どういうことなんだろう?

しかし、定価は5832円。軟化した脳をもって読み下せるかも疑わしいし。買おうかなぁ、買うのはよそうかなぁ♬🎶 とサブちゃんしてる間に、あれれ、ほぼ1か月が経っちまったんだけど。

ところでボクは、仕事を離れた時間、文庫をよく読む。月に、1520冊はかたい。でも、流儀がある。ひたすら、重さで買う。つまりは、定価も重要。500円は、買わない。700円なら、買う。どんな著名作家の、売れ筋本であろうとも。なぜ? 内容の、深みが違うと独り決めしているからなのさ。

ところが、ところが。時々、だまされちゃうんだよね。ボクは、かつて本づくりをしていたから、からくりは知っているはずなのに。からくり? 活字をちょっと大きくして、頁の行数を少し減らし、やや厚い紙に印刷すれば、同じ分量の原稿でも必ず重くなる。結果、定価を高くできる。こらっ、出版社! ずるは、止めとけ! ジジーを騙すな!

関連して----甚だな重大問題が、最近とみに頻出している。新聞の、文庫広告を睨み据え、読みたい書名をメモし、書店に駆けつけて、重さと定価をしっかり吟味してから買い求めるんだけど。家やオフィスにたどり着いて「ありゃあ!」と頬をひっぱたく回数が、ムーアの法則のように増えてるんだ。「これと、これ。先週すでに買ってるじゃねえか!」

 はい。毎年のごとく数千円は損してる私めを、ぜひ冷ややかにお笑いあれ。人間とは、かくも愚かな生きものなんです!